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2)事故原因の特定に関する考え方
裁判外紛争処理制度では当事者双方の合意による解決を目的とするため、裁判のような厳密な証拠は要求されるものではなく、双方の主張と証拠を比較してどちらかがより真実に近いか「優越的蓋然性」をもって事実認定するのが妥当であるとしている。

 

3)損害の範囲と賠償に関する考え方
相対交渉の段階では当事者間の話し合いを基本としているため、個々の事案で多少のばらつきが出るのは止むを得ないとしている。

 

4)原因究明に関する費用負担
外部の第三者機関に原因究明を委託した場合の費用は当事者負担になっている。また現場確認の出張費についても当事者負担と考えるのが妥当である。

 

5)組織・運営
既存15機関の多く(12機関)は業界団体(公益法人)の一部門として設立され、事務所、職員、経理の分離の程度は様々であるが、いずれも公正・中立性を確保する立場から、例えば運営委員会の構成などに配慮している。また運営資金は関連業界の拠出金・会費によっているが、一旦関係団体に納入してそこから入金したり、他業務とは別会計で区分経理するなど透明性の確保に努めている。なお、ほとんどの機関は斡旋までは無料であり、運営に当たって手数料収入には期待していない。

 

6)情報管理
紛争処理に当たって知り得た秘密やプライバシーの秘匿は、紛争処理機関としての当然の義務であるが、事故再発防止等消費者保護の観点から、プライバシー保護に配慮しつつ情報を公開することもまた必要である。また、解決事例の公表は、判断基準の標準化、話し合いの透明性、公正性の確保等にも資すると考えられる。このため各機関は情報管理について、?@紛争処理中の事案は非公開、?A当事者双方の了解の範囲内で公益上必要な情報を公開、?Bカテゴリ別に統計的に取りまとめたデータを公表、と考えている。

 

2. 無動力小型船舶の事故事例調査

 

マリンレクリエーションの普及とともに愛好者も増加しつつあるディンギーヨット、カヌー、水上スキー、サーフィン、ボードセイリングなどの無動力船の事故、トラブル事例を調査した。その結果、製品欠陥によると思われる事故はボードセイリングでのマスト破損等ごく少数であった。これらの無動力船は構造が簡単であり、特別な技術知識は必要としないが、事故責任判断に当たっては使用者の技量と気象・海象、安全性担保の限界、耐久性(劣化)などの問題により留意すべきと考えられる。

 

3. 試行的PL相談室

 

平成8年9月から10月の1ケ月間、試行的PL相談室を開設し、どのような案件がどの程度持ち込まれるか、また相談員が公正・中立性を確保しつつどのように対応するかについて実地検証を行った。
相談室は中立的立場の公益法人である(財)日本海洋レジャー安全・振興協会内に設置し、相談員としてプレジャーボートの品質管理、技術等の知識に優れ、苦情相談業務経験のある専門家11名を製品種別毎に委嘱し、当初は毎日6名体制、その後は1名体制で対応した。また問題が複雑化した場合には弁護士と常時相談可能な体制をとった。
期間中の相談件数は9件、内PL法関連の事故は1件(火災)、品質クレームは1件(ヨット補助エンジン部品逆取付)であった。いずれも相談員の調査結果と説明に申出者が納得して解決したが、情報入手、製造者への照会、機器の調査等で前者で50日、後者で28日を要している。
今回の試行により得られた知見として次のようなものがあげられる。
(1)最初の対応が重要であり、相談員はかなりの経験を有するものをあてる必要がある。
(2)PL相談室はPL法関連事案に限らず、製品の安全性、品質に関する照会、苦情等にも対応することが消費者保護の観点から重要である。

 

 

 

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